はじめに
アクチュアリーという職業に関心を持ち、就職活動に取り組まれている皆さんへ。
将来、アクチュアリーとして活躍するためには、「正会員資格」だけでなく、実務で活きるスキルやマインドセットが求められます。
本記事では、日本アクチュアリー会の正会員として現場で働く筆者が、アクチュアリーとしてキャリアを築いていくうえで必要だと感じる「6つの資質」を紹介します。
就活の準備段階で知っておくことで、これからの学びやキャリア選択の指針となるはずです。
1. 学力と資格:スタートラインに立つために
アクチュアリーへの第一歩は、一定レベルの数学力と、アクチュアリー会の資格取得です。
一次試験では大学受験レベルの数学(特に微分積分)が問われるため、ある程度の学力は必須だと思います。GMARCH以上の大学出身者がアクチュアリーに多いことも、その背景に数学力の重要性があると感じます。
また、特に2次試験で学ぶ「商品開発」「保険会計」「リスク管理」等の理解がアクチュアリーとして働くうえで必要不可欠です。アクチュアリー試験は難関ではありますが、正会員になることで得られる知識および信頼は働くうえで大きく、努力に見合う価値がある資格です。
2. コミュニケーションスキル:分析を伝える力
アクチュアリーは、数理的な分析だけでなく、それを「誰にでも分かる言葉」で伝える力が求められます。
上司や関連部署など、数理の専門家ではない相手に、どのように意思決定に活かしてもらうか——その橋渡し役となるのがアクチュアリーです。
話す力、書く力、資料にまとめる力。それらは努力と経験で磨けます。
以下に、筆者が実際に学んで役立った書籍を挙げておきます。学生時代から勉強しておくことで、入社時からスムーズに業務に取り組めると思います。:
- 文章力:『入門 考える技術・書く技術(山崎康司)』
- 資料作成:『入門 考える技術・書く技術【スライド編】(山崎康司)』
- 話し方:『人は話し方が9割(永松茂久)』
3. プログラミングとデータ分析力:これからの必須スキル
近年、アクチュアリーにもデータサイエンスの知識が必須となりつつあります。
Python、R、Excel VBAなどの言語を使って、大規模データを処理・分析する場面が増えています。AIや機械学習を用いたモデル開発に関わる機会もあります。
「保険×データ」というフィールドで戦うアクチュアリーにとって、プログラミングスキルは極めて重要です。以下の参考書がおすすめです:
- Excelスキル:『外資系金融のExcel作成術』
- データ分析入門:『Excelで学べるデータサイエンス入門講義(笛田薫)』
4. チームワークとリーダーシップ:一人では完結しない仕事
保険商品の開発一つとっても、企画から保険料算定、システム対応、募集資料作成、営業職員の教育、モニタリング等、部署をまたぐ業務がほとんどです。
アクチュアリーは「ただ計算する人」ではなく、プロジェクト全体を進行させる一員としての動きも求められます。
特に将来的にプロジェクトを牽引する立場になれば、リーダーシップやマネジメント力が重要です。
おすすめの書籍は以下の通りです:
- チーム運営:『最強のデータ分析組織(河本薫)』
- リーダーシップ:『採用基準(伊賀泰代)』
5. 倫理観:信頼される専門職に
アクチュアリーは、企業経営にかかわる重要な意思決定に影響を与える立場にあります。
だからこそ、「経営に都合の良い情報」ではなく、「正しい情報」を示す姿勢が求められます。
倫理観のある行動は、社内外の信頼を獲得し、アクチュアリー全体の評価向上にもつながります。
ぜひ、日本アクチュアリー会の『行動規範』をご一読ください。
→アクチュアリー行動規範の改正
6. 持続的な学習と自己成長:学び続ける姿勢
保険業界は、医療技術・社会環境・テクノロジーの進化とともに常に変化しています。
アクチュアリーに求められる知識も、時代に応じてアップデートが必要です。
たとえば次のような周辺領域も、今後ますます重要になってくるでしょう:
- 英語
- 気候変動
- 資産運用
- リスク管理(CERA)
- 生保・損保・年金の横断的理解
正会員資格の取得はゴールではなく、新たなスタートです。学び続ける意識こそ、プロフェッショナルとして必要です。
おわりに
アクチュアリーとしての活躍には、試験に合格するだけでは足りません。
「伝える力」「学び続ける姿勢」「仲間と協働する力」「倫理感」など、さまざまな資質をバランスよく育てることが求められます。
これらの力を、就活生のうちから少しずつ意識して磨いておくことで、将来のキャリアは大きく広がっていくでしょう。
アクチュアリー就活塾では、皆さまの成長と成功を後押しできるよう、さまざまなコンテンツを今後も提供してまいります。
未来のアクチュアリーとして、共に歩んでいきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
コメント